撮影先日のケーキ撮影で、私たちがいちばん感動したのは、撮影の技術ではありませんでした。パティシエの方の手です。
撮影したのは、ナショナルクライアントのケーキです。動画ではなく、スチール(写真)の撮影でした。代理店の方、全体を取り仕切るディレクターの方、段取りを担当する方、そしてパティシエの方。大勢が集まった現場に、私たちはカメラマンとして参加しました。私たちは動画の構成や演出だけでなく、スチールの撮影も担当しています。
ケーキの仕上がりを決めたのは、カメラではなく、撮る前の段取りと、ケーキをいちばん知っている人の手でした。この撮影で見えたことを、5つにまとめます。自社のケーキや焼き菓子を通販で売っている方や、これからお菓子の撮影を検討している方に読んでいただきたい内容です。
1. 光と背景は、"模型"で先に決めておく

この写真のケーキは、本物ではありません。撮影の前に私たちがいつも行っている、模型を使った光の確認です。
本物のケーキは、出す直前まで冷やしておかなければなりません。光を探しているあいだ、ライトの前に置いておくことはできないのです。だから、光の向きも背景も、先にこの模型で決めておきます。本物が届いたら、置いて、すぐ撮れる状態で待ちます。
2. 撮る順番は、ケーキの状態で決める
ふつうの物撮りなら、撮る順番は背景や角度で決めます。同じ背景のものをまとめて撮り、同じ角度のものを続けて撮る。そのほうが、照明やカメラを動かす回数が少なくて済むからです。
ケーキは違います。順番は、背景や角度ではなく、ケーキの状態を中心に決めたほうがいい。どのケーキが溶けやすいか、どれが崩れやすいか。それをいちばんわかっているのは、パティシエの方です。
この日は、チョコレートのケーキがありました。段取りを担当する方たちが、溶けることを前提に、次のような準備をしてくれていました。
- 部屋の温度を下げておく
- クーラーボックスを用意する
- チョコレートのケーキを、いちばん最初に撮る
撮る順番は、撮影の前に、パティシエと一緒に決めておきます。
3. それでも、チョコレートは想定より早く溶けた
ここまで準備しても、チョコレートの表面は、思っていたより早く溶け出しました。
写真は、撮影のあとで補正ソフトを使って直せることもあります。けれどこの日は、あとから直せる範囲を超えるほど、表面が溶けてきました。カメラマンとしては「これは、あとで補正しないといけない」と、正直あせりました。準備をしても、食品は思いどおりにはなりません。
4. 直したのは、パティシエの手だった
そこで動いたのが、パティシエの方でした。いくつもの道具を使い分けて、溶けたところをその場で直していきます。私たちが「あとで補正しよう」と考えていたところが、あっという間に、実物のまま直っていました。これには、本当に感動しました。
私たちは照明を組んでシャッターを押すだけ、と言ってもいいくらいでした。写真をあとで直すより、目の前のケーキを直せる人がいる。ケーキの撮影は、職人さんの手でほぼ決まります。
5. 押した時間は、段取りとチームワークで取り戻す
ケーキによって、色はまったく違います。現場では、ケーキ一つひとつの色に合わせて、背景や下に敷くメラミンボードが用意されていました。
それでも想定外のことが重なって、時間は思っていたより押しました。最後まで撮りきれたのは、関わったスタッフ全員が本当に協力的だったからです。段取りで整えられるのは"八割"まで。残りの"二割"は、現場のチームで乗り切ります。
撮影の前に決めておく3つのこと
- 本物の商品を出す前に、代わりのもの(模型や同じ形の器)で光と背景を決めておく
- 撮る順番を、背景や角度ではなく、商品の状態(溶けやすさ・崩れやすさ)で、つくり手と一緒に決める
- 撮影の日に、商品をいちばん知っている人(つくり手)に来てもらう
撮影の道具はAIで大きく変わりましたが、ケーキをいちばん美味しそうに見せるのは、ケーキをいちばん知っている人の手です。まずは、次の撮影につくり手の方が立ち会えるかを確かめてみてください。お菓子の撮影の段取りで迷ったら、お気軽にご相談ください。
商品と、今困っていることを送ってください。担当者からメールでご連絡します。
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